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ターミナルケア

若い時期や健康な時は気にも留めないことですが、人間には寿命があること、いつかは死を迎えざるを得ないことは全ての人に共通の運命と言えるでしょう。また、自分にはまだまだ関係ないと思っていても、親、兄弟や身内や知人が亡くなったという方は多くおられるでしょう。

今、自分が元気で生きているということの先には、いつか年をとって死ぬ時が来るということと繋がっていることを誰も否定することはできません。では、自分や家族が不治の病や事故のために人生の終わりが見えてきた時に、その事実を受け入れ、そのことについての恐れや心の不安をどのようにコントロールし、誰もが避けることの出来ない「死」という出来事を受容することができるように導いていけるのか、考えてみられたことはあるでしょうか?

あなたやあなたのご家族が、ある日突然「癌です」、「余命はあと半年です」と医師から告げられたとしましょう。そして、あなたの体が癌にむしばまれ、苦しみの後に死に至るまでの自身の心の過程を5つのプロセスに分けて考えてみましょう。

『否認』

「まさかそんなはずはない!」「自分に限って癌などありえない」という風に多くの患者さんはそのことを「否定」し、拒絶反応を示します。今まで健康であったし、食生活にも気を使っていたし、運動も適度にしていたのに・・・。否定はしてみたけれど、医師から癌であることの客観的事実、検査データやC-T写真などを見せて説明されるともう否定のしようがない。

『憤怒』

すると心の中から「怒り」の気持ちが湧き上がってきます。「なぜ自分だけが・・・。他の人は健康なのに・・・。」認めたくない事実を前に自分自身や周囲に対する怒りが募り、自暴自棄な気持ちになります。しかし、否定をし怒ってみたものの、病状はより明らかになり、事実を否定しようがなくなると、心の中ではこのつらい現実を打ち消す方法を考えようという気になってきます。

『取り引き』

心を入れ替えることによって「神様どうかこの病を取り除いてください。お願いします。」「たばこもお酒もやめますので何とかなりません?」などと今までの自分の不摂生を反省したり改善したりして少しでも回復を願います。

『憂うつ』

しかし無情にも病状が進行し、日に日に体がつらくなってくると、気持ちが落ち込み「うつ状態」に陥ります。「もう仕事も家事もやりたくない!人とも話したくない」
希望もなく生きる気力が萎え、治療を継続する意欲さえもなくなり、なげやりなどうでもいいような無気力な日々を過ごすようになります。残された家族はどうなるのか?財産や仕事はどう整理をすればいいのか、悩み事につきることがありません。

『受容』

このようなつらい日々を経たあとは、ようやくあきらめと共に家族のために気持ちの整理がついてきて、この否定しようがない、避けられない現実をもう「受け入れよう」という気持ちが整ってきます。まるで長い旅行に旅立つための最後の休息の時のように。そして、自らが「死ぬ瞬間」を迎えるための心の準備が完了していくのです。

この末期医療における患者さんの心のプロセスを研究し解明したのは、アメリカの「エリザベス・キューブラー・ロス」という精神科の女医で多くの医師によってその理論が受け入れられ、臨床の場で活用されています。患者さんのこのような心のプロセスを知ることの最も重要な理由はそのことが患者さんの心のケアに役立つからです。医師や看護師などの医療従事者がなすべきことは、単に身体的な病を治すことだけでなく、その患者さんの背景になる社会的、家庭的な側面を理解し、病の元になる根源的な原因を考察してアプローチしていくことがより望ましいと言えます。
なぜなら、生活習慣病という用語があるように、多くの病気の原因はその患者個人の家族歴や食生活、たばこや酒などの嗜好品、家族や職場におけるストレスなどの色々な要素に大きく影響を受け、関連しているからです。「病を診て人を見ず」という言葉がありますが、これからの医療は「人を観て病を診る」即ち「患者さんの背景を理解して病気を治す」という視点が必要でしょう。そのことが病気の治療だけでなく患者さんの心の奥に潜む根本的な問題を正していくことにつながるからです。

当院ではご本人の病気の治療だけでなく、ご家族や職場や学校など、ご本人につながるあらゆる社会的な問題点を克服していただけるようアドバイスすることを心掛けていますので、何でも心おきなく、ご相談ください。

耳鼻咽喉科は特に末期医療と関係の深い科と言えるでしょう。なぜなら、耳、鼻、口腔、咽頭喉頭部に発生する癌がとても多いからです。中でも舌癌や咽頭癌は増加傾向にあると言われていますし、喉頭癌で声を失う方も多くおられます。副鼻腔には上顎癌、耳には聴神経腫瘍があり、悪性リンパ腫が顎部の腫れから耳鼻科で発見されることもよくあります。他にも関連して食道癌、甲状腺癌などを耳鼻科で発見、治療することもあります。このように多くの癌を治療する耳鼻科ではおのずと進行癌にも遭遇する機会が増え、末期状態の患者さんを治療することも多くあるわけです。

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